家を古民家風に直したい。決める前に、工務店にも家族にも見てもらいたい。こうしたい形は頭の中にあるのに、図を引く道具は覚えるところから始まるので、引いた経験がなければ手が出ない。
そこで、それを2文で書いて、AIに「この間取りを図にして」と頼んだ。寸法の入った1枚が出てきた。
ただし、これは工事のために作る図ではない。相談の叩き台だ。
もくじ(全 6 節・約 7 分)
01
困りごと
実在の依頼ではなく、試すために置いた設定だ。
自分の家を、古民家風に直そうと考えている。土間はこう通して、座敷はこのくらいの広さで、と、間取りは自分の中で決まっている。
つまずくのは、そこから先だ。口で言うと、聞いた人ごとに違う絵が浮かぶ。手で描いた絵は、寸法が合っているのかどうか自分でも分からない。工務店に相談に行くにしても、見せられるものが手元にない。
図を引く道具を入れて、操作を一から覚えるほどの話でもない。ほしいのは、相談に持っていく1枚だけだ。そうなると残るのは、引ける人に頼む道だ。その1枚のために、まず誰かを探すところから始まる。
間取りなら、言葉では説明できるのに。
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02
やったこと
伝えたのは2文だけ
間口5間、奥行4間の平屋。玄関から土間が奥まで通っていて、右手に8畳の座敷と6畳の次の間。左手が台所と水回り。
渡したのはこれだけだ。返ってきたのは、間口9100mm、奥行7280mm、延床66.25㎡(約20坪)。座敷は8畳、次の間は6畳。言った畳数が、そのまま出てきた。1間 = 1820mmという尺貫法の計算は、こちらから教えていない。
一度では出ない。足りない言葉を足す
一度目がこれだ。読める図になっていないうえ、左上に670mmほどの帯が余った。座敷と次の間を並べただけでは、奥行の数字が埋まらない。
そこで、この帯を縁側にした。奥行がぴたりと閉じる。言葉で足りなかったぶんは、こちらが決めるしかない。一度で仕上げようとせず、出てきた図の余ったところを見て、足りない言葉を足すほうが早い。
言っていない数字は、AIのほうで置かれる。屋根の高さがそうだった。図の中に「仮に置いた値」と書き入れてもらっている。
絵を描かせるのではなく、どの線が何かを言わせる
図の中の線には、「外壁・南」「間仕切り・土間東」「引戸・土間から座敷」と名前が付いている。壁を壁として、引戸を引戸として扱わせた結果だ。どの線が何なのかが、あとから人が見て分かる。絵として似ているだけの1枚とは、ここが違う。
壁の線を引いただけでは、図として読めない。基準の線から順に、室名・畳数・寸法まで載って1枚になる。
同じ寸法から、壁が高さを持った形でも見られる。土間から座敷への引戸の開口が空いているのが分かる。
出てくるのはここまでだ。
03
実際の変化
変わったこと
この時間は計測したものではなく、作業の記録から見積もった目安だ。
04
かかっている費用
道具は無料だ。図を組み立てる道具も、図面として書き出す部品も、買い足したものはない。
お金として出ていくのはAIの利用料だ。こちらで使っているのはいちばん重い契約(月200ドル、3万円ほど)を複数で、今回の作業はその月額のうち、およそ数時間ぶんにあたる。工程ごとに計ってはいないので、ここは手元の見当だ。
ただし、これを「間取りの図を1枚出すのに月3万円かかる」と読まないでほしい。契約が重いのは、ふだんまとまった量の仕事を押し込んでいるからだ。
書類を整理する、文案を出すといった軽い使い方なら、いちばん安い契約(月20ドル、3千円ほど)から始められる。
別に要るのが人の手間だ。2文を書き、出てきた図の足りないところに言葉を足し、寸法を測って確かめるところまでで、およそ数時間ぶん。ここも計ってはいない見当だ。図を引く練習をしない代わりに、この数時間ぶんはこちらの手が要る。
05
つまずいたところと直し方
「間口5間」と言った線が、壁の中心になっていた。外面は左右に60mmずつ張り出し、間口9220mmで出てくる。建築で「間口」と言えば、ふつうは外面か内法だ。言葉だけでは、どこからどこまでを指しているかが決まらない。
しかも壁がどちら側に寄るかは、線を引いた向きで変わる。設定の名前を見ても、どれが正解かは当てられない。そこで、3通り全部を出して実測し、指示どおりに出た置き方を採った。
引戸が床の下に潜っていた。向きの指定が足りず、地面より下に置かれていた。
検査を通っているのに、見ると違っている。これがいちばん怖いところだった。出来上がったファイルの検査は毎回エラー0件だ。それでも目で見ると、3件おかしいところがあった。
- 寸法の数字が100倍で出ていた
- 壁の断面の塗りが、破線の枠にしか見えなかった。塗りに変えたら、今度は建物全体が真っ黒に埋まった
- 線の色を分類任せにしたら、室名も表題欄も消えた
自動の検査を通ることと、図として読めることは別だ。出てきたものは必ず目で見る。これが結論だ。
06
能登の仕事でどう使えるか
古民家は置いた設定だが、同じ困りごとは能登のあちこちにある。手を入れたい家があり、引き受け手を探している空き家があり、それを宿や店にしたいという話がある。どれも、まず誰かに相談するところから始まる。
- 自分の家を直したい人。こうしたいという形を、工務店に相談に行く前に1枚にしておける
- 空き家を宿や店にしたい人。家族や引き受け手と、同じ絵を見ながら話せる
- 工務店。施主が言ったことをその場で図にして、思っているものが同じかどうかを確かめられる
どれも、話を始めるための叩き台だ。頭の中にあるものを人に渡せる形にする、それだけの用途だ。
そのうえで、いちばん大事なところを書いておく。ここで出てきた図は、工事のために作る図面(設計図書)ではない。実際に建てる・直すときは、建築士と工務店に渡してほしい。この図が代わりになることはない。建物の規模や造りによって、建築士でなければ作れない図面が法律で決まっている。
できないことも書いておく。この図は、柱が足りるかどうか、地震に耐えるかどうかを見てくれるわけではない。寸法が合っているかどうかも、こちらが測って確かめた。
始めるなら、頭の中の間取りを2文で書いてみるところからだ。間口と奥行、どこに何の部屋があるか。それだけで、話の出発点になる1枚は出てくる。能登で家や空き家の相談を始めるとき、その1枚があるかないかで、話の進み方は変わる。
